だんまり日記 6月

◆雨が降り始まった。

◆あじさいが咲いた。
隅田の花火がことしも圧勝。

 

 

 

 

 

 

 

◆はなやの店先で
みなれないアジサイの鉢植えをぼんやりながめる。
フリルをぬいつけたような。
なんつたったらいいのかわかんないいろの。
などなど。
わたしは 隅田の花火がすきだ。
まず名前がすきだ。
ぱぱぱぱぱ~んと咲く雨の中の火の花だ。
あと花数でまけてばかりの
青いから植えたはずの
なぜか赤化しつつある古典的な丸いアジサイがすきだな。
と逡巡していると。

◆「あなたがあんまりたいくつそうだからいいことおしえてあげましょう。」
ほほえみがおだやかな花屋のおかみさんが
手をとめないまま言うには。

◆鎌倉の某寺社の境内の池に、毎年いまごろ蛍を放すんです。
これは鎌倉の市民でもあんまり知りません、
だって、そうですよ、池のふちはせまいんですもの、
あしもともまっくらですから。
口コミにもなりません、
知ってるひとがだまって寄ってくるんです。

◆行ってごらんなさい、
市民の秘密ですけど、市民のふりして、行ってごらんなさいよ。

◆ふっくらとしたおかみさんは
もうそのままあじさいみたいだ。

◆行っていいのかわからなくて今年はよした。

◆あなたが あんまり たいくつそうだから。

◆隅田の花火? 花屋ではめっきりあつかわなくなったわね。
出回りすぎたんですよ、めずらしくないんだもの。
市場でも見やしない。

◆描く。

◆みたものではなく かぎとったものを描く。

◆みえているもとのあいだにある あつみを描く。

◆坂をかけおりる。ちからをみなぎらせて。

◆かけおりた記憶。

◆飛び石をふんで。はずんで。

◆蛇をふまないようにして。

◆かえるをふまないようにして。

◆ぐらりとゆれる石にあしをとられないようにして。

◆ぬれた草のにおいをかぎながら。

◆のぼることばかりがエネルギーをつかうわけではないのに。

◆低気圧が停滞中。

◆湿気をものともせず絵ばかり描く月になった。

◆今月は以上です。
あたまのなかに文字や文言がありません、すいません。

◆「あなたが あんまり たいくつそうだから」

◆そうかもしれないが そうでもない。

◆そこで みじろぎひとつしないとしても。

◆3日ほど、だまっているままだとしても。

◆6月になるたびに
低気圧にまかせて たたずむたびに
きっと 思い起こすだろう。