だんまり日記 5月

◆ちょっと目を離したすきに昨夏強力に伐採した急傾斜地。
がっかりしたその眺めに慣れる。
ひとびとがほがらかに山登りをするのが見える。
伐採した斜面に伸びた草が
つよい風になでられて波を立てて光る。
よじ登ったらさぞ愉快だろう。
大海原単独航海を妄想するだろう。
立ち入り禁止にすな。
登ってみよ、こどもたち。

◆午後のはやい時間までは絵を描く。
逡巡と絶望をくりかえして新作に挑む。
それから家のしごとをする。
大工仕事を。

◆末の息子が縁側でたばこをふかす。

◆つかれないのか?
別腹、ってやつだな。

◆おれのかあちゃん、大工。って、
なんかかっけえな。

◆じゃなくて絵描きだったな。

◆「本日休講」の末息子に、
スーパーと米屋とホームセンターへの
お買い物をたのむ。

◆米屋さんではご高齢の店主がこまかい値段表を読むのもてつだったらしい。

◆「これは・・・・9かい?0かい?」
「あ。9、っすね。」

◆右ひじがいたむが関節なのか筋なのか。
大工仕事のせいなのか描きすぎのせいなのか。

◆やまぼうしのしろいはなが咲いた。
ことしの冬の大雪のこぼれだねが
咲いた。
ような気がする。

◆編集さんから電話をもらい、
描けてきた。などと言って退路を断つ。

◆夢中になってきた。
きっと できるだろう。
わたしも 早く見たい。

◆旧友たちとあうことが増えてきた。
みんなにくらべて自分の記憶のうすさにたじろぐ。

◆ひどくひさしぶりなのは はじめましてみたいなもんだ。
と ひとり納得しようと試みる。

◆ここからのつきあいはいまからきまるのだろう。

◆いまから きめる。

◆ながい付き合いがずっとつづいてきた旧友は。

◆不器用な彼女のきつい物言いの、その やさしさ。

◆鋭さと激しさの前で、存分にぼけていられる。

◆たまにあえば だいじょうぶだ。

◆たまにあわないと だめだ。

◆考えがまとまったのでフェードインするように描き始めたが
つつがなく描き終わったためしはない。

◆行き詰ると安心するというのもどうかとおもうが、
ここをこえれば。という壁のひとつひとつが可視になってきたところが
ひとつの成長なのだろう。 か。

◆きっとできるだろう。

◆雨が来る。
低気圧が近づいている。

◆はやすぎやしないか。花火大会。5月。平日。

◆「ひとが来ない日を選んだんでしょう、ここ数年すごいですから。
浜にひとがおりきれないって、もう、とにかくすごいですから。」
近所の商店主さんの見立てだった。

◆やっぱ すごいひとだった。
もう打つ手はないだろう。

◆風もつよかった。
集落には花火の破片がふりそそいだ。
「7寸。丸。」
花火のふだも降った。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆大雪の日いらいの、なんだか集落総出の、お掃除の朝。
うすくしめりけをおびた青空をみあげて思い出す、ゆうべの花火。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆だいたいがまあ、泣けてくる。おわるころには。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆したしい友人の葬儀の日にもあがった、この街の花火。
きっと彼女もみているだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆みていますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ほかの、生きていた友人たちも いまともに ながめていますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆今をいきるわかいひとにははげましを。
歓声をあげるこどもたちに 未来永劫平和を。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆結婚記念日の夫婦に祝福を。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆みんな元気か。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆よくわらってるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆泣くのをがまんしてないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆おめでとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆おめでとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆おめでとう。