◆しごとばを家の2階にうつして初めての春。
向かいの山がさくらいろにけむるのを知る。
日増しにあかるさを増す。
風に揺れる。
山が、しろく笑う。
◆仙台開花とラジオが。
そろそろ石巻にも咲くだろう。
◆いつもの旅。
八重山へ。
◆波照間の海の大潮か、この引きは。
行ったことのない沖へ、歩いて。
のぞいたことのない深みの青さに。
異界の中の異界のいりぐち、海中に、淵。
◆竹富島あかるい月夜。
夜歩きにかかせない手持ちの電灯は
いらない。
◆月影を踏んで浜の桟橋へゆけば
月光は波に散り、さかなはぽちゃりと跳ねる。
ひとりしずかに月光を浴びる青年がいる。
梟の声がひびく。
しずかに。
◆竹富は花の島。
◆におい立つ南国の空気。
深く息を吸う。
◆海への道は 蝶の道。
風の音。
◆泳ぐにはふさわしくない浜には。
◆竹富は 猫の島。
◆ごめん。ひるねのじゃまをして。
◆あかばなに再会する。
「また来るならば、行ってきます と言って 帰りなさい」
◆では 行ってきます。
雲を抜けて雲海の夕映え。
夜に向かってひとまず帰る。
いつまでも 夕焼けに見送られ。
◆また 来ます。
◆ひさしぶりだ、低気圧がとおる。
あたまのなかを みっちりととおりぬける。
◆音楽家の訃報をきく。
◆おとこともだちと初めていったそのひとのライブ。
◆おとこともだちとツアーをおいかけていった豪雨の北関東。
◆試合前の野球場でおとこともだちが
「新譜。」と”ウォークマン”できかせてくれたすきとおるピアノの音。
「好きだと思うよ。」といって彼が目をやった外野から夕暮れの湿っぽい風。
◆しろい夾竹桃のけしき。
◆夏のひかり。
◆生まれたばかりの赤ん坊をだいてまたゆらゆらときいていた、
東京下町の古い家並みのひるさがりの部屋。
◆9月の風の中。
◆5月の光の中。
◆低気圧は通過中だがきょうはとくにがんばることにする。
◆新緑が膨張している。すきとおるみどりいろが網膜をたたく。
まぶたをおしあけて目をみはれ。
あたまのなかでもわもわとでもいいから音楽を
せいいっぱいきらびやかに鳴らしながら
自分をひかりで満たせ。
◆筆をとり季節外れの絵を描く。
◆音楽もうずを巻いて通過中。