◆いま てがけている作業は
なんかちっちゃすぎるのじゃないのか。
ということを
東北のひとひびとの爆発的な笑顔をみて思った。
そんな旅からかえってきた。
◆わたしのこれまでのしごとをながめながら
「気配」でしかないさまざまなこと について
みるみる感じとってことばにしてくれたひとたち。
◆感動した。感謝した。
やくにたちたい。
◆で、いまやってるこれだが、
これはこれで 漠然としたご要望があることも事実だ。
自分が書き散らしたことばから
作っていこうという試みだけれど、
「自分が」という視点を一度きっと捨てたほうがいい。
かきちらしたことばたちが
うまれてきた「気配」にたちかえって考えたほうがいい。
安易な「自編集」をしても それはできあがらない。
あしたからがんばろう。
◆いつまで やってんだよん。
◆来年作業する本のモチーフはきまっていて
イメージもできてきていて
確認の旅にまた 行かなくちゃならないが、真冬に、北海道に、
そのつぎのことについても
ぼんやりと たちのぼりはじめる。
◆旅が要るとしになったのだな。
◆しかたないな~~~~~。
◆11月なのにさむいので
試運転。とおもって ストーブに火をいれた。
負けた気がする。
◆まどから西にみえている山の斜面は、
くすんだ緑いろをしている。
それがどうだ、今朝はのぼりたての朝日をあびて、
全山紅葉みたいに輝いていた、
見逃さなかった。
おはよう!東向きの山。
◆どこにいようが どんなだれであろうが
「わたし」は世界の中心だ。
いつもまわりに東西南北ぜんぶある。
◆おもいがけない かなしいわかれがあって
そのわかれが あたらしいであいを もたらした。
であったひとと、わかれたひとのことをはなし、
わかれたひとは
いなくなってはいない とわかる。
わかれたひとと いつかまたあってわらおうときめている、と
であったひとに そういった。
◆他界、というからには
今をいきるあとに別のせかいがあるのだろうなあということが
したしいひとの他界にでくわすたび
リアルに感じられてくる。
サユリさんはそこで、ほがらかにわらいながら
道端で泣いてる子をだきあげて、だいじょぶだいじょぶ、がんばろーね~を連発、
おしるこ 食べさしたげる!と
行った先には サイト―さんがいる。
サイト―さんは そこのいえの明るい日がさす台所で
こげついたなべやらやかんやらのステンレス磨きに精だしながら
あんたさあ、すこしゆっくりしなよ。
あせったらできるもんもできやしないよ。
あたしが磨いてやるよ、光るもんが光ってないのは
許せないんだよ。
いいよ、あんたはゆっくりしてろって。
おちつかないんだよ、あんたがぼんやりしてないと。
っつって
きいてんの?やまざきはさあ。
と怒ってるふりはするが
日が暮れれば しみじみと
しかし 底なしに飲酒していることだろう。
きょうは志ん朝の噺でもききにいくかなって
ぶらっとでかけたところに
ミカさんがのけぞって大爆笑していて
サユリさんは意味もなくつられて大爆笑、
サイト―さんは、なんなんだよ、笑いすぎだよ、と
うすらわらいをうかべながら
たちまち意気投合、
3人でとりあえず
飲めやうたえの二次会にくりだすにちがいない。
◆いやだよ、寺のほうがおちつくんだよ。としぶるサイト―さんを
いいじゃん、いこうよ~。
きらきらしたものもあるよ、
きっと気にいるって!と、サユリさんとミカさんが
教会へつれてゆく。
◆サイト―さんは
ステンドグラスなどに目をやりながら、
あれさあ、ジグソーで枠つくって色つきのアクリル板かなんかで
なっちゃってモンつくれるなあとかって考えちゃうね、
と、煙草を吸おうとするが、
サユリさんに一喝され とりあげられる。
「タバコはやめなよ、タバコは!」
なんちゅう大声出すんだよ、いいんだよ、なんできゅうに看護師にもどるんだよ。
といいながらもサイト―さんは、吸うのをやめる。
◆ミカさんは、
あ!ステンドグラス、つくったら?!
お寺仕様の!!!
と できあがりまでも想像してもう笑いがとまらない。
◆それじゃ あんた、欄間になっちまうだろ?
サイト―さんがためいきをつき、ミカさんはまた大爆笑。
◆ん~。たのしそやな。いつか混ぜてもらお。
◆宮沢賢治がはじめて海をながめて胸おどらせた山からのながめを
どこのながめよりもあいするそのまちのひとと、
べつべつのまちで
おなじ時刻に空をながめる。
流れ星がふるはずの夜だ。
東のそらはくもっており ながれぼしはみえず、
満ちた月は ひどくあかるくて
震災直後の停電の夜の巨大な満月を思い出す。
さいわいなのか かなしいのか わからない、
おそらくこのさいわいは かなしみとセットだ。
◆さいわいは かなしみと くんでいる。
◆しかたがないと くちにしてみる。
◆ひとつのそらの覆いのしたの
底でうごめくよりほかない。だれもが。
◆いきる よろこび。
◆施設で暮らす父親は娘が孫にかけた電話を受け取ると言った。
結婚おめでとう。
しあわせにね。
しあわせになりなさい。
くれぐれもたのむよ。
◆20数年前父親は娘に言った。
結婚おめでとう。
いいか、いつでも帰ってこいよ。
ふたり いっしょにな。
◆目の前で、動くほうの手でスマホをもって穏やかな笑顔で話す父と、
暮れには、クリスマスをいわおう、と 娘は胸がいっぱいになる。
父へのプレゼントは
あたらしい5年日記帳だ。
◆そんなわけで
ひとりででもしゅっと行ってクリスマス会をやろうとおもうよ。
と娘は夫にいう。
ぼくも行くよ。
と夫はいう。
◆『いつでも帰ってこいよ、ふたり いっしょにな。』
◆じゃあ いっしょに かえろうか。
◆そのまえに おでん。