だんまり日記 10月

 

◆週末の旅先を 台風が狙っているときき、祈ろうとおもう。

団扇もて舞いを奉納する。それにより蠅を一匹追い出すに成功し、

占いは吉と出た。

 

◆創作は削る作業と知る、じぶんにとっては。

 

◆祈願の舞 奉納もむなしく、旅先の石垣島を台風が直撃してきた。

羽田発直行便の機長 攻めのフライトで定刻到着したところが、

むかえてくれたのは強風にざわめくさとうきびばたけのさけび。

 

◆離島への船便は1日半にわたって全便が欠航したので、

島の方々が淡々とこなしてゆく嵐への備えをつぶさに拝見する。

はなうた混じりに土嚢をならべる。

窓ガラスには雨戸やシャッター。

あるいは、野球場などではりめぐらされているようなネットがするすると張られる。

居酒屋へ行き、飲み、「ま、今回のはそよかぜです。」

なんつっておっさったを、夜半過ぎ、東シナ海に向いた宿のサッシから

風圧で浸水してくるのを「そんなときはおつかいください。」と

部屋にそなえつけられたぼろ布を当ててながめる。

じわじわとひろがってくるおそらくは塩まじりの雨水を、

することもないので浴室のスポンジで吸い取ってはオリオンビールの空き缶に採集してみる。

 

◆翌朝、暴風域が切れてから散歩に出た。

台風浴。

荒れても海の色はうつくしく、飲み終わる寸前のクリームソーダ。

離島へはしるはずのちいさな舟たちは、

身をよせあってきしんであらしをしのいでいる。

 

◆台風一過の朝。

離島桟橋でははりきって もやい綱を解く男たち。

アセロラの実が全部落ちたよ~、隣の幼稚園児がかぞえあげて「455個。」って言うんだよ~

とわらう女将。

宿の窓からみおろす桟橋を発着する舟たちの、こころなしか、速いこと速いこと。

悠然とかえってきた、海上保安庁の船。

 

◆猫も蝶もひとも、おんなじに晴れの空の下にはいだして

ようやく渡れた竹富島はおおにぎわきで、

きのうのあらしで咲けなかったハイビスカスたちのうなだれた顔に一礼しながら、

たまたまのめぐりあわせで今日生まれた花たちの歌声をきく。

 

◆「また来る日のことをいうなら、行ってきます、というあいさつで帰りなさいね。」

と教わり、乗合バスで、やっぱ、とりあえず、「帰る」。

 

◆女子高生たちが笑い声8割しゃべり声2割でおはなしをしている。

 

◆「卒業したら、どーする?」

「外へ出ろっていわれてるから、そーする。」

「どこ?」

「沖縄。進学。保育士。」

 

◆23号は、八重山にきた。24号は沖縄にきた、那覇で65メートルの風がふくとき、

八重山は夏の見本みたいに晴れ上がり、過ぎ去ったあらしの片づけをしていた。

海でさかなとあそぶ者たちが、ぎょうさん おった。

おきなわけんは広い。

横浜と箱根に、別々の台風はこない。

 

◆南の島では夏の嵐が。北の大地では冬の嵐が。

そなえ。ひそみ。そこでくらす覚悟。わらう力。

ま、しゃーない。ちゅうことばは前向きだった。

いまくらすここで生きるにも、ちっちぇえこといわずに覚悟もって生きてわらおう。

とかって また思う。

 

◆「読み語り」という言い回しに出会った。

「読み聞かせ」にずっともっている違和感のひとつは、

「きかせる」という ことばに対するものでもあったので、

ものすごくしっくりくる。

まあ、もうひとつは

「読む」に対してだけど。

 

◆書きあぐね描きあぐねて1年のものを、

これでさいごまでいけるかもしれない、とおもった形を

全部捨てるのはこれで3度目なので、そろそろできるかもしれない。

 

◆日の目をみるかは 別のもんだい。

 

◆近所からピアノの調律がきこえる。

素でしゃべるピアノのこえ。

 

◆先週につづき、

じぶんの所在地に台風がむかってくる。

ここにくるということは あそこへは行かないということだ。

また

わたしがここにいるということは あそこにいない、ということで、

ここにいないものは

ここではないどこかにいるということだ。

 

◆あたりまえのことを どんどん延長して考えると、

ものすごくふしぎな想いにつながっていく。

ここにはいないだれか、

死別した他者が、ここにはいないだけで

どこかにいるんだろうな、と信じることもできるだろう。

 

◆やっぱ、台風は生命体くさい。

 

◆急ぎの用があって、雨がふりだすまえに、

くつしたもはかないで下駄をひっかけて街へ小走りでいったら、

交差点で元CAの友人に会った。

飛行機関係者は嵐を前に 高揚しつつも すこぶる冷静だ。

石垣行きクルーがそうだったように。

かっこいいぞ。

彼女は、「台風、来る、っちゅう前にね。」っつって

自転車を爆走、スーパー方面へ走り去った。

にっこにこしていた。

 

◆彼女が飛行機を降りたのはごく最近だが、

以前、じぶんが ぶらぶら通りすがったバス停で、

たまたまバス待ちしてた彼女に

「どこか おでかけ~?」と聞くでもなくごあいさつをすると、

うん、ホノルル。

なんて答えが返ってきてた。

ピンポイント過ぎる。

すぐ そこ 感が真に迫る。

 

◆飛行機に乗る際は、

離着陸時の主翼のメカニックな動きを注視するのを大きなたのしみにしているが、

「なんかさ~、いつも主翼のところの席だよね~。

なんでかね~。こんなにおもしろいのに空いてるんだね~。」

などと つれに口走ったところ、

「俺ががんばってとってるんだ。」

とのことだった。

あ、ありがとうございます。

 

◆このたびの  台風一過の  ゆうやけの  かなしさ。

 

◆暮れないで。

まだ救助ヘリが行くから。

 

◆いま やっている これ。

ことばから はじめている これ。

できるのか。

ひっかかる ひらがなに できるのか。

行き詰ったつもりは つもりでしかない。

もっと行き詰らないとできない。

 

◆さあいこう。か。ぜつぼーをこえて。な。

 

◆えほんには

絵と文があるが

絵と文のすきまもある。

 

◆ほかでもないが 船が、

よこゆれするのをローリング、たてゆれをピッチング、

そして雑巾をうまくしぼるときのように舳先と艫がねじれるようにゆれるのをサギングという。

ちゅうのを元ベテランふなのりに先日きいたが、

それはわたしの父だ。

 

◆もうすこし頻繁にききとりに行こうとおもう。

船にのっていたとき、

そのとき彼は仕事にいっていたわけだが

しらないところでくらしていたということでもある。

 

◆はなしをするあいだ、

父は船にゆられるか。船のしごとを思うか。

また 旅ができるか。

家族を残して、家族のためにでかけた船旅。

 

◆こんどは、連れて行ってもらう。

 

◆ハロウィーンに世間並みの関心がなかったが

それは昨年までのはなしだ。

一年ぶりにきけるか、すぐそこの保育園から。

オバケに変身したと思われるオトコ保育士の脅し声と

園児のきいろい叫び声。

なまはげか。

と思わずにはいられなかった音の情景。

よく晴れた。

にぎやかを分けてもらいたくて、

集落中で、家のまどをあけるよ。

ていうか 午後でかける約束をしたのは失敗だったろうか。

間に合うように帰って来られるだろうか。

となりの坊やの 熱はさがっただろうか。