2012
25
Dec

日々記

氷点下の国 そして 希望の君の椅子 のこと

2012年12月25日(火)

 

クリスマスです、信者のみなさまおめでとうございます。

そうでないわたくしも、しみじみ さいわい について想う季節です。クリスマスありがとう。

 

美瑛岳

 

 

 

 

 

 

 

 

年のおわりに、初めて冬の北海道をお訪ねしました。

去年、ご縁が始まり、

今年さらにひろくふかいつながりをいただいた

「君の椅子」のかたがたがおさそいくださって、

(君の椅子とのご縁は、

『るすばんいす』からはじまりました。

 日々記/君の椅子

美唄の彫刻公園『アルテピアッツァ美唄』での

冬至のイベントにうかがうのが大きな目的です。

東川まちの灯

 

 

 

 

 

 

 

 

氷点下の夜はまずは、元祖・君の椅子の町、東川から。

ことし9月に初めて、

君の椅子経由で知り合った町の行政をあずかるかたがたとお目にかかり、

っつうか、飲んで飲んでたのしくおはなしした際、

わたくしどもは、とうとう、「外部町民」になってしまったのでした。

ほんとうは住んでしまいたい町・東川の株主制度の仲間にいれてもらったので、

町の施設で一泊できます!

9月に飲んで飲んだお店のすぐそばです。

しずかに雪が降る中、きれいに除雪された白い道をきゅっきゅとふみならして居酒屋へ~♪

いやはや!おとなの二人旅。の割には、かなりハイテンションな雪の夜散歩。

ちょうど町も忘年会の最盛期、席はいっぱいで、

いきなりおじゃました私たちは、だいすきなカウンター席のはじっこですっかり落ち着いてしまい、

極寒の中のあたたかいつどいの数々のざわめきや笑い声もごちそうに、

あれ飲んでこれ飲んであれ食べてこれ食べて。

東川居酒屋

 

 

 

 

 

 

すみっこになっちゃってごめんなさいね、と

女将さんや大将にお気づかいいただくのを恐縮しながらもついつい長居。

初めてすごす冬の北海道の夜は、ただ あたたかく、

もしかすると寒さにおどろいて懲りて帰るはめになり、

住みたい病もおさまるのではないか。

との不安というか周囲の期待というか、そういうものを一気に払拭し、

ん。いけるなあ、冬も。

などと大きな気持ちになっていくばかり。

わたくしのようなしごとのひとは東川にいっぱい住んでいるときけば、

もうどうしたらいいかわからない。

でもまあ、あれだね、今日は氷点下も一ケタだからね、

問題は15度超えだよ、と述べる連れと、そういえば20年ほど前

氷点下15度の北米の街で

あかんぼうも一緒に暮らしたことがあったのでした、

だいじょうぶだったのでした。

さあ。くるか。氷点下15度。

翌朝。14度と出ました。

ちょいと顔がいたくて、その感覚を思い出しました。

 

そのなかを、旭川を経由して、美唄へ向かいます。アルテ2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルテピアッツァ美唄は9月にお訪ねして、

安田侃さんの彫刻と大自然の調和の、すっかりとりこになっていました。

アルテ1

 

 

 

 

 

今回のいちばんの旅の目的、

冬至のアルテイベントは、

君の椅子、そして

アルテ両方の運営団体を

率いていらっしゃる磯田憲一さんと

元HBSのアナウンサー安藤千鶴子さんの朗読会

「アルテの森語り」です。

大きな薪ストーブひとつで暖をとる会場『カフェアルテ』に

集まっているのは約50人。

日暮れとともに、ながく北海道の行政に携わられた、

心あついダンディー磯田さんが、

山本周五郎の「裏の木戸はあいている」を読まれます。

貧困や生活保護制度の見直しなどが課題とされる昨今、

むかし、ほんとうの貧しさとそのなかにあるかたがたの心根にふれながら

支援にあたられたという磯田さんが選んだ作品は

脈のようなしずかなうねりをもって心にせまります。

しんじる、ということや、ささえあう、ということを、

だまったままあたまのなかにかきつける気持ちです。

続いて安藤さんが読まれたのは、一般の方の、手記です。

福島で、昨年の、3月11日、震災のその日に、

福島市と南相馬市で生まれた赤ちゃんのおとうさんやおかあさんの、手記です。

 

君の椅子は、以前の日々記・君の椅子にもかいたとおり、

北海道のちいさなまちぐるみの「うまれてきたこどもへの祝福」のためにつくられ、贈られます。

震災があって、

被災地のために、「希望の君の椅子」が作られ、

被災3県で2011年3月11日に生まれた赤ちゃんを、

多くの命が失われたその日に生まれたあたらしい命を 祝福するために、

連絡のとれた98家族に贈られました。

そして、その日のそのことを記憶としてとどめるために、3.11生まれの赤ちゃんのご家族が、

チーム君の椅子の依頼に応えてたくさんの手記を寄せてくださったとのことでした。

その中からの2編が読まれました。

 

南相馬では、余震の中でその坊やは生まれました。

地震そのものの混乱、そして。

南相馬のすべてが放射能への恐怖と大混乱にあるなか、

安否のわからない方々もまだたくさんいらっしゃるというそのころ、

ようやく出生届を出しにいった役所で、

「あの日に生まれてくれたなんて!おめでとうございます!

だいじょうぶです、しっかり育ててあげてください!」

と祝福と励ましでもみくちゃになったこと。

遠慮しようかと半分きめていた支援物資を、

役所のかたが反対にきづかってくださり、支給場所でまた、

さらに多くのかたがたから祝福を受けたこと。

福島市では、その坊やが地震の2時間前に生まれたために

家族がみんなが病院にあつまっており、

大きな苦難をみんなそろって迎え、守り合い励まし合いながらこえてゆけたことを、

坊やがその日にうまれてくれたおかげだというおかあさん。

その後の、放射能への不安と避難の可否の葛藤を、家族は決して離ればなれにならず、

ここ福島で生きてゆくという決心にしていったこと。

読んでいる安藤さんも、ときおり踏ん張ったような涙声。

みんなが身を固くして聞き入り、いくつもの肩がふるえており。

この手記を、よむべきひとたちが、遠くにたくさんいるはずだ。

と低くつぶやく声があり。

胸がいっぱいになり、おめでとう のことばのちからを知り、

祝福が生み出す未来を想い、

生まれ出たばかりのちいさな命のエネルギーに想いをはせるうち、

とおくから、

 

どしん。

どしん。

どしん。

 

ときこえてきたのは、おもちをつく、杵の 音。

遠くにカフェアルテ

 

 

 

 

 

 

 

 

アルテの力持ちのわかいスタッフに混じって

参加者の男手がじゅんぐりについたおもちや、

かぼちゃ、そのほかいろいろなごちそうをかこんで

石炭ストーブの部屋でまた、

さまざまなかたがたとお話しをしました。

9月以来3カ月ぶりにお目にかかる磯田さんには

石巻に行ったことなどもおはなしすると、

「石巻でうまれた赤ちゃんに、

まだ希望の君の椅子を届けられていないのです、石巻だけには。」

とたいへん気になさっており、

それは、そのころの石巻の混乱がまだあまりにも大きく、

石巻市役所に届け先の相談ができなかったことが理由で、

もう相談してもだいじょうぶな状況なのかどうかわからないまま、

早くお届けしたいものの、市行政全体への遠慮と躊躇があるのです、

なのに、直接市役所にいう以外、石巻に つてがないのです、

そうか!やまざきさん! 石巻にご縁がありますか!

なんとかしたいのです、なんとかはやくとどけたいのです。

磯田さんの声に力がこもります。

それはもう、わたしだって、

君の椅子が、希望の君の椅子が、

ぽつんとひとつ、待っているんなんて、だまってはいられない、

磯田さん、時間かかるかもしれません、でも、

ちょっと石巻のすてきなかまぼこやさんの粟野さんに相談してみます、

ついこの間、希望の君の椅子のこともお話してたのです、

ご存知でした、感動したとおっしゃってました、

るすばんいすと似ていて驚いたともおっしゃってました、

粟野さんのしたしい方々に、

復興作業にもおおきくかかわっていらっしゃる女将さんたちもたくさんいらっしゃるようです、

人のつながりの糸口でもみつかるかもしれません、

地元のかたに、状況をご判断いただきながら、

市役所にはたらきかけてもらえるどなたかをさがしましょう、

いっしょにさがさせてください。

などと話すそばで、

石炭ストーブは 煙突までまっかっかになっており、

誰かが、焚きすぎだ、これ。と

すこしストーブを落ち着かせる。

外でするもちつきを何回もみんなでかこむので、おおきな扉は開け放ってあり、

氷点下の世界が淡い灯に橙色に染まってひろがっている。

冷気が来るけれど、だいじょうぶ。

だいじょうぶ。

そんなすてきな 美唄の夜でした。

 

旭川夜

 

 

 

 

 

 

夜のうちに旭川まで戻ると、いやはや。

これはなんですか。雪じゃないですよね、

空気、凍って光ってますね、いやはや~。

きたな、未知の氷点下!

旭岳

 

 

 

 

 

 

翌朝目にしたのはきっとこれがダイヤモンドダスト。

そんな旭川駅を富良野線で出発、

晴れ渡る白銀の世界のなかを、

いつも夏には山登りにいく十勝岳のふもとへ。

道中車窓からは、

冬はめったにお姿をあらわさないという大雪の山並みがくっきりと、

おめざめです。

ありがとう!山の神さま!

十勝岳

 

 

 

 

 

 

髪の毛こおらせつつ、ニホンザルのみなさんの気分をおもいながら

白金温泉の露天風呂につかり、

せつない気分で旭川発最終便に乗るころは、

どうやら20度あったらしい。

こういう顔のいたさは初めてでやんす。

わかりました。

わかりました。

だいじょうぶです。

しろい道

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう。

冬の、北海道。

あたたかい、北海道。

やっぱり好きだ。

どうしよう。

 

希望の君の椅子からうまれた手記についての日々記

白金